カスタマーサービス・トラブル対応
リターンポリシー設定とリターン 3 大分類
出品前の必須設定と、クレームが来た時の最初の判断軸
Lesson 1 で略語(INAD / INR / Restocking Fee / Resolution Center など)と 4 つの基本姿勢を押さえました。本レッスンでは 「出品前にどうリターンポリシーを設定するか」と「リターンリクエストが来た時、それが 3 種類のうちどれに該当するか」の 2 つを扱います。この 2 つが土台にあれば、Lesson 3 以降の対応が機械的に判断できるようになります。
📋 1. eBay のリターンポリシー 3 つの選択肢
出品時に「Returns accepted」をどう設定するかで、後の対応負荷が大きく変わります。eBay が提供する選択肢は 3 種類。
最大の誤解ポイント。「No Returns」に設定しても、INAD(商品が説明と異なる)を理由に開かれたリターンリクエストは eBay の Money Back Guarantee(MBG)の対象として必ず受理されます。No Returns で拒否できるのは 「気が変わった(Buyer’s Remorse)」系の理由だけ。「受け付けない=ノーリスク」ではないので、後述の対応フローを必ず押さえてください。
💼 2. 中古カメラ販売の推奨ポリシー設定
結論から先に。当塾の標準推奨は「30 日間・送料セラー負担(Free Return)」です。理由を順に説明します。
「返品が怖いから No Returns」は 逆効果です。eBay の検索アルゴリズム(Best Match)は Returns accepted のリスティングを優遇するため、No Returns に設定すると Click-Through Rate(CTR)と検索順位が下がる。さらに INAD は受理されるので「返品ゼロ」にはなりません。30 日 Buyer Pays が最低ラインと覚えてください。
🏷️ 3. Top Rated Plus listing バッジ= FVF 10% 割引
「Free Return にするとなぜ得なのか?」の答えがここ。Top Rated Plus listing(バッジ)は、Top Rated Seller(TRS)が以下の 2 条件を満たすリスティングに自動付与されます。
(1) FVF(最終販売手数料)の 10% 割引。手数料 9.35% のストア契約セラーなら実質 8.42% に。$1,000 の販売で約 $9.4 の節約。(2) 検索結果でバッジ表示+上位優遇。同じ商品でも CTR が上がるため、売上増に直結。「TRS / 30 日 Free Return / Handling 1 日」の 3 点セットを目指す価値があります。
古い情報源で混同が多いのですが、TRS(Top Rated Seller)はセラーレベル(年間取引数・Defect Rate などで決まる)、TRS+(Top Rated Plus)はリスティングのバッジ(個別出品の設定で決まる)です。TRS でも Handling 2 日設定にすると、その出品にはバッジが付きません。Lesson 6 でセラーレベルの正典を扱います。
🔍 4. リターン理由の 3 大分類(来た時の最初の判断)
バイヤーがリターンリクエストを開く時、必ず 理由(Reason)をドロップダウンから選びます。これは大きく 3 種類に分類でき、対応方針が決まります。受信したらまず「どの分類か?」を確定させるのが最初のステップ。
① Buyer’s Remorse(自己都合返品)— No Returns で拒否可
「気が変わった」系の理由で、バイヤーの主観的な不満が原因。バイヤー側が送料を負担する義務がある(または Free Return 設定なら Restocking Fee で減額対応)。No Returns 設定にしておけば eBay が自動で却下してくれます。
② INAD(商品が説明と異なる)— 必ず受理される
「届いた商品が出品ページの説明と違う」という主張。No Returns 設定でも eBay の MBG が発動して必ず受理されます。返送料はセラー負担、3 営業日以内に対応しないと自動で全額返金+ Defect が付与されるので、ここが最大の戦場。Lesson 4 で詳解します。
③ INR(商品が届かない)— 追跡番号が命綱
厳密にはリターンではなく 未着ケースとして開かれます。バイヤーが「届いていない」と主張した場合、追跡番号で「配達完了(Delivered)」が証明できればセラー保護が発動。$750 以上の商品は 署名確認(Signature Confirmation)が必須で、これがないと敗訴する可能性が高い。第7章「米国向け DDP 必須化」のレッスンに関連実務があります。
INAD(Item Not As Described)系・到着破損などの申し立てが来た場合、「動画の提出が可能であれば送ってほしい」と丁寧に依頼するのが第一手です。eBay はバイヤー保護が強いプラットフォームのため、動画提出を強制することはできません。あくまで「証拠協力のお願い」のトーンで。
- 「届いた状態の動画/開封時の動画/不具合が確認できる動画があれば送っていただけませんか」と依頼
- 動画提出に応じる → ほぼ正当なクレーム。証拠と合わせて返金 or 返品対応へ
- 動画提出を拒む・話を逸らす → 悪質バイヤーの可能性大。Resolution Center で eBay 介入を待つ/チャージバック対応時の材料
- 動画は eBay メッセージ上で添付不可なので、Google Drive / WeTransfer / YouTube 限定公開 等のリンクで案内
- 受け取った動画は商品ID・取引ID と紐づけて保管(後日 eBay Payments・カード会社のチャージバック対応時にも有効)
「動画を待っているから対応が遅れた」は eBay には通用しません。リターンリクエスト受信から 3 営業日以内に必ずアクション(承認/拒否/メッセージ返信)を取ること。3 営業日を過ぎると eBay が自動でバイヤー有利に介入し、Defect Rate にもカウントされる可能性があります。詳細は 本レッスン 節5「3 営業日ルール」 で。
運用の鉄則:動画提出依頼のメッセージ送信=「対応中」というアクション扱いになるので、まずメッセージで証拠依頼を投げ、並行して 3 営業日内に Resolution の判断(返品受諾/部分返金提案/拒否+eBay 介入待ち)を進める。動画到着後に判断を覆すのは可能だが、放置は不可。
⏱️ 5. リターンリクエスト受信後 3 営業日ルール
分類が決まったら時計が動き始めます。セラーは 3 営業日以内に何らかの対応をしないと、eBay が自動エスカレートし、バイヤーに全額返金+ Defect 付与で終了します。
3 営業日以内に 「Accept」「Decline」「Send Message」のいずれかを行わないと、eBay は自動的に 「Case closed without seller resolution(セラー解決なしでクローズ)」として処理します。これは Lesson 6 で扱う Defect Rate に直接カウントされる重大インシデント。週末を挟む取引でも、必ず受信から 24 時間以内に第一報を返してください。
🎯 6. 中古カメラ特有のリターンリスク 5 パターン
カメラ・レンズ販売で最も発生しやすいリターン理由を順位付け。出品段階で予防可能なものが大半です(Lesson 8 で詳解)。
🏆 7. カテゴリ特有 Q&A
月 10 件未満の学習期は 30 日 Buyer Paysで十分。返品送料を取られないので資金が安定します。月 10 件を超えて TRS を狙う段階に入ったら 30 日 Free Returnに切り替えてください。Free Return 化で FVF 10% 割引+検索順位向上が効くので、返品送料を払う以上の売上増になります。最初から両方を試すなら、$1,000 以上の高額品だけ Free Return という運用も可能です。
よくあるパターンです。「これは INAD ではなく単に気が変わっただけ」と判断できる場合、Accept Return しつつ届いた商品を eBay に申告することで、Defect の付与を回避できる可能性があります。手順は (1) リターンを Accept、(2) 商品到着後に Resolution Center で「Item returned not as it was sent」を申請、(3) 写真エビデンスを提出。eBay 判定でセラー有利になれば部分返金(最大 50%)に切り替えできます。Lesson 4 で詳解します。
使える条件は厳格です。(1) Free Return 設定であること、(2) リターン理由が Buyer’s Remorse 系であること、(3) 商品が 使用された痕跡がある or 元の梱包と異なる状態で返品されたこと。この 3 条件が揃って初めて 最大 50% 差し引けます。INAD 理由のリターンには適用されないので、「INAD で来たのに Restocking Fee を引いた」は規約違反でアカウント警告対象。Lesson 3 で具体的な操作手順を扱います。
理論上は検索ブーストがありますが、中古カメラ販売ではデメリットの方が大きいのが実感値。理由:(1) 60 日後にバイヤーが「ようやく光学系の不具合を見つけた」と主張すると 記憶も写真も曖昧になり対応が困難、(2) 資金回収が 2 倍長引く、(3) すり替え詐欺の遂行時間も延びる。検索ブーストよりも 30 日でクローズして次の取引に集中した方が ROI が高いです。30 日固定推奨。
第5章「ビジネスポリシー」で扱った通り、Returns Policy は複数作成して出品ごとに割り当て可能です。例えば「Standard 30 日 Buyer Pays」「Premium 30 日 Free Return」の 2 つを作っておき、$1,000 以上の高額品にだけ Premium を割り当てる運用が定石。Seller Hub → Account → Site Preferences → Business Policies で管理。ポリシーは 3〜5 個に絞った方が運用が楽。
これが RNR(Return Not Received)のリスクです。eBay が発行する Return Shipping Label には基本的な保険が付帯しますが、$1,000 以上の場合は 追加保険を別途購入するか、自前で 署名確認+全額補償保険付きの返送ラベルを発行してバイヤーに送るのが安全。さらに 返品到着時に開封動画を撮影してすり替え対策を兼ねます。Lesson 4 で詳しい防衛策を扱います。
📎 関連レッスン
- 本章 Lesson 1「第8章 の歩き方と用語インデックス」(前レッスン)
- 本章 Lesson 3「部分返金交渉の実務」(次レッスン)
- 本章 Lesson 4「INAD ケース・エスカレーション・すり替え対策」
- 本章 Lesson 6「セラーレベル指標管理」(TRS 条件の正典)
- 第3章「中判カメラ:実取引データと出品テンプレ」(コンディション対応表)
- 第5章「ビジネスポリシー」(Returns Policy の作成手順)
- 第7章「国際配送のトラブル対応」(INR 対応の実務)
※ 本レッスンは 2026 年 5 月時点の eBay 仕様に準拠。FVF 割引率は変更される可能性があるため、年 1 回は eBay 公式の最新値を確認してください。